借金問題を解決できる制度として債務整理・自己破産を耳にすることが多くあり、どちらも借金の減額や免除が可能になるイメージがあります。債務整理と自己破産の違いがわからず混同されるケースも多いですが、債務整理と自己破産はイコールではありません。
そこで、こちらのページでは債務整理と自己破産の違いや自己破産の特徴をまとめました。債務整理や自己破産を検討している方は参考にしてください。
債務整理イコール自己破産ではない
債務整理と自己破産は同じ意味ではありません。
債務整理と聞くと自己破産を指すと考えがちですが、債務整理の種類のひとつが自己破産です。自己破産は、債務整理をする際に選択できる方法のひとつです。
債務整理とは
債務整理は、国が認めている借金救済制度です。
返済できなくなった借金を法律に基づいて減額したりなしにしたりする手続きで、借金問題を根本的に解決するために利用します。
債務整理は借金を整理する手続きの総称で、具体的に3つの方法があります。
任意整理…将来の利息をカットして月々の支払い負担を軽減する方法
個人再生…現在の借金を大幅に減額できる可能性のある方法
自己破産…借金を全額免除してもらう方法
1つ目の任意整理は債権者と交渉して今後の支払い利息をカットしてもらい、現実的な返済計画を立て直す方法です。任意整理は裁判所を通さないため正確な統計がありませんが年間300万人が利用しているとも言われていて、債務整理をする人のほとんどが任意整理で解決していると考えられます。
2つ目の個人再生はより大幅に借金を減額できる方法で、保有している財産を失わずに済むため住宅ローンを抱えている人に選ばれています。借金額に応じて5分の1から10分の1まで減額できますが、収入要件が厳しく誰でも利用できるわけではありません。
そして、3つ目が自己破産です。
自己破産とは
自己破産とは債務整理の手続きの一つで、借金の支払いを全額免除してもらう手続きです。
自己破産手続きを行うと原則として抱えている借金がゼロになりますので借金問題を一気に解決できる可能性が高く、返済に追われる生活を終えて再スタートできる効果があります。
一方、借金問題の解決にはつながるものの代償も大きく、いくつかのデメリットもある方法です。
自己破産のメリット
自己破産のメリットは次の3点です。
- 借金がゼロになる
自己破産は借金をゼロにできる唯一の債務整理方法です。
任意整理や個人再生では借金の減額はされるものの、ある程度の借金は残りますので返済を続ける必要があります。一方、自己破産をすると全ての借金の返済義務が免除されますので、今後の収入は借金の返済ではなく全て生活費に充てることが可能です。
- しつこい取り立てから解放される
自己破産手続きを開始すると、しつこい取り立てから解放されます。
自己破産を検討するほど借金の返済に追われている人は、債権者からの取り立てが続いていて精神的にも疲弊しているケースが多いです。ですが、弁護士に依頼して自己破産の手続きを開始すると、債権者は取り立てができなくなります。訴訟や強制執行を申し立てられていてもいったんストップしますので、精神的にも落ち着くことができます。
- 無職でも利用できる
自己破産は債務整理の中で唯一、収入がない人でも利用できる方法です。
債務整理後も借金の返済が続く任意整理・個人再生は、返済できる見込みのある人しか利用できません。しかし、自己破産は返済がなくなりますので、現在無職の人や専業主婦・パートやアルバイトの人でも利用できます。
自己破産手続きが認められないおもなケース
自己破産手続きを行うにあたって収入などの条件はありませんが、自己破産が認められないケースもあります。よくある事例は次の通りです。
- 支払い不能であると認められない場合
現在抱えている借金を返済できる見込みがないと認められないと自己破産はできません。
支払い不能かどうかは借金の額で決まるのではなく、収入や財産に対する負債の割合で決まります。具体的な数値が決められているわけではなく自分で判断するのは難しいため、弁護士に相談し自己破産が可能か判断してもらうことをおすすめします。
- 過去7年以内に免責を受けている場合
自己破産できるのは過去7年以内に免責を受けていない人です。過去7年以内に自己破産や個人再生の手続きを行った方は、自己破産手続きの対象外となります。
しかし、個々の事情を考慮の上免責が認められるケースもありますので、再び借金問題で悩んでいる方は一度弁護士に相談することをおすすめします。
- 債務者が財産を隠匿したり不当に処分したりした場合
自己破産手続きをする際に財産を隠匿したり不当に処分したりすると免責不許可事由に該当し、自己破産が認められないケースがあります。
財産を隠して自己破産しようとしても、いつか必ずばれてしまいますので正直に申告してください。手続きの過程で財産隠しが見つかり免責不許可になると借金はゼロになりません。また、場合によっては詐欺破産罪に問われる可能性もあります。
- 特定の債務に対してのみ弁済を行った場合
破産手続きをする前に友人から借りたお金など特定の債務のみを先に返済することは禁止されています。
自己破産は残っている債務者の財産を債権者に対して平等に分配する手続きです。特定の債権者に優先して返済を行うと平等ではなくなりますので、免責不許可事由にあたるとされています。
- 浪費やギャンブルなどの行為によって債務を負った場合
個人再生の手続きでは借金を抱えた原因は問われません。一方、自己破産では破産手続きに至った経緯も問題になり、ギャンブルやブランド品の購入などの浪費が借金のおもな原因である場合、免責不許可事由に該当してしまいます。
ただし、浪費やギャンブルによる債務でも、正直に話し反省が見られれば裁量免責とされて自己破産できるケースが多いです。
自己破産のデメリット
借金がゼロになり再スタートが切れる自己破産ですが、デメリットもあります。
- 一定額以上の財産を手放さなくてはいけない
自己破産手続きを開始すると、時価20万円を超える財産は処分しなくてはいけません。
持ち家ならば住宅を手放すことになります。また、売却した場合に20万円以上の値がつく車やバイクも処分対象となります。
さらに、ブランド品や99万円を超える現金も持てなくなります。
一方、生活に最低限必要となる身の回りの物や99万円までの現金は処分する必要はありませんので、一文無しになってしまうわけではありません。
- 破産の事実が官報に掲載される
自己破産手続きをすると政府発行の官報に名前と住所が掲載されます。官報は誰でも見ることができますので周囲の人に破産の事実を知られたくない人には大きなデメリットです。
しかし、官報をチェックするのはごく一部の職業の人で一般の人が目にするものではありませんので過度に心配する必要はありません。
自己破産をすると約10年は借金ができなくなります。そのため、官報を見た闇金業者が融資の勧誘をしてくるケースがありますので注意しましょう。
- 手続き中は就業を制限される職業がある
自己破産手続き中は公的な資格を使った一部の職業に就けなくなります。資格制限がかかるおもな職業は次の通りです。
○警備員
○弁護士・司法書士・税理士などの士業
○生命保険外交員
○宅地建物取引士 など
しかし、自己破産の免責が決定されると制限は解除され、これまで通り働くことができます。また、公務員など資格制限のかからない職業であれば手続き中も問題なく働くことができます。
自己破産は債務整理手続きのひとつ
債務整理=自己破産のイメージをもつ人が多いですが、債務整理は借金を整理するための手続きの総称であり、任意整理・個人再生・自己破産が含まれます。
自己破産手続きを行うと借金がゼロになりますので借金問題の解決に非常に大きな効果がある一方で、財産を手放したり手続き中は一部の職業への就業が制限されたりなどのデメリットもあります。
また、誰でも自己破産ができるわけではありませんので、借金問題に悩んでいる方は一度弁護士など専門家に相談することをおすすめします。
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